Excel管理は本当に低コストなのか──ベトナム企業が見落としている「隠れたコスト」

「Excelで十分」「紙の書類でも問題ない」――こうした業務運営は、今なお多くのベトナム企業で一般的です。しかし、デジタル化が加速する現在、その“慣れ親しんだ管理方法”が企業の成長を妨げる要因になりつつあります。

PwCの2023年レポートによると、データ入力や承認、報告などの手作業に依存した業務プロセスによって、企業は年間20〜30%もの運営コストを失っているとされています。これは単なる業務効率の問題ではなく、利益率や競争力にも直結する経営課題と言えるでしょう。

手作業による管理で企業に損失が発生。

ベトナムではこれまで、多くの中小企業がExcelや紙の書類を中心とした業務管理を続けてきました。しかし、市場環境や顧客ニーズが急速に変化するなか、この管理方法は徐々に限界を迎えています。現在、データを本格的にデジタル化している企業は約13.7%にとどまり、データ分析や業務自動化まで実現している企業は約2.2%に過ぎません。多くの企業では、情報が部門ごとに分散し、業務が個人の経験や属人的な運用に依存しているのが実情です。

こうした管理体制がもたらす問題は、一つではありません。最も分かりやすいのは生産性の低下です。多くのオフィスワーカーは、データ入力や資料作成、情報検索などの定型業務に勤務時間の20〜30%を費やしていると考えられます。例えば、平均月給1,000万ドン程度の社員20人を抱える企業であれば、毎月数千万ドン規模の人件費が、本来より付加価値の低い業務に費やされている可能性があります。企業規模が大きくなるほど、その影響はさらに拡大します。

手作業中心の運用では、入力ミスや情報の重複、部門間でのデータ不整合なども避けにくくなります。こうしたミスは直接的な損失だけでなく、確認作業や修正対応といった「手戻りコスト」を生み出します。一般的に、不具合を後工程で修正するコストは、最初から正しく処理する場合と比べて数倍に達するとされており、企業収益に少なからず影響を及ぼします。

さらに見落とされがちなのが、機会損失です。顧客情報が一元管理されていなければ、購買履歴や問い合わせ履歴を十分に活用することはできません。その結果、営業機会を逃したり、顧客一人ひとりに合わせた提案が難しくなったりします。一方、デジタル化を進めた企業では、データを活用したマーケティングや顧客体験の向上が可能となり、市場競争力の強化につながっています。

もう一つ重要なのは、意思決定の質です。リアルタイムで経営データを把握できなければ、経営判断は経験や勘に頼らざるを得ません。市場環境の変化に迅速に対応できず、投資判断や経営資源の配分にも影響が及びます。こうした意思決定の遅れは、長期的には企業競争力そのものを左右する要因となります。

こうした課題を解決する手段として、DXへの取り組みがますます重要になっています。DXが目指すのは、単にシステムを導入することではありません。業務プロセスを見直し、データを経営資源として活用できる体制を構築することにあります。これにより、生産性の向上や業務効率化だけでなく、迅速で質の高い経営判断も可能になります。

改善につながるデジタル変革。

手作業による管理は、一見するとコストを抑えられるように見えるかもしれません。しかし実際には、人件費や手戻り、機会損失、意思決定の遅れなど、さまざまな「見えないコスト」を生み出しています。今後、ベトナム企業に問われるのは、DXを導入するかどうかではなく、こうした隠れたコストをいつまで許容し続けるのかという経営判断なのではないでしょうか。

専門家へのご相談準備はよろしいですか?